死の棘。
 
 
 
■ 人の精神というのは、極めて微妙なバランスの上に成り立っていて、些細なことをきっかけにその均衡が破れてしまうものだ。
 何処からか幻の声が聞こえてくる。
 現実と虚構の区別がつかなくなってくる。
 頭の中に何人もの個人が棲んでいて、ひっきりなしに話し掛けてくる。
 いわゆる急性分裂状態なのだけれども、そうした訴えを聞いていると、遠いの国の神話を読んでいるような気になってくる。
 何処へゆくのだろう。
 戻るのだろうか。